K.I.さんの便り

 ドイツ留学中のK.I.です。年齢は20歳。性別は男性。
 本文はドイツ留学に関する、感想や情報、教訓などを記載しております。

 最近はドイツも日に日に気温が増し、汗絶えぬ日が続きます。日本の帰国の時も近づき、今目に映る光景もまた見納めかと思うと、名残り惜しさや感慨が湧いてきます。
 今回はそんなドイツで起きた小さな出来事を振り返っていきたいと思います。

・銀行カードのパスワード
 恐ろしいことに私はドイツで作った銀行のカードのパスワードを2回も忘れてしまっています。家賃などを振り込む上では問題ないのですが、引き出すことはまったくできません。
 この原因はもちろん私にあるのですが、第2の原因としてパスワードを個人で設定することができない点があります。日本ではパスワードは自分で設定することができます。もちろん生年月日などは基本的に避けることはできますが、何かしら所縁のある番号を使えば記憶することは簡単です。ですがドイツではパスワードは銀行側から発行されるランダムの数字です。パスワードなどはメモに取るといざ紛失した時に危険であり、あくまで暗記することが重要です。ですが所縁のない番号というものはなかなか記憶に残りません。
 もちろんこれは言い訳でしかないのですが、2回も銀行カードのパスワードを忘れた私としては、これは少々厄介な問題でした。

・魚類・貝類を懐かしむ
 これは当然かもしれませんが、四方八方を海で囲まれた日本とは違い、ドイツでは魚は高額であり、貝類に関してはスーパーマーケットでは拝むことすら困難を極めます。そして私も日本人であり、時には魚や貝を食べたくなるのです。
 これまた異国での醍醐味と言えばそうかもしれませんが、食に関してはやはり舌は産まれた国のものが1番馴染むということを実感しました。ちなみに肉類・野菜類は日本に比べて安値のせいか、栄養面では日本にいたころよりもやや潤沢になっている気はします。お陰でこの歳になって身長が1年と経たずしてセンチ単位で伸びました。

・水に関する認識
 ドイツでは飲料水は購入するものであり、当然ですが下水道は飲めません。そのせいか、水とは『購入するもの』という認識が脳に染み込んでしまいました。もちろん下水道も『水道料』という形で購入する販売物なのですが、公園でも気軽に無料で安全な水が飲める環境が整っている日本は異常なのでしょう。
 これから先の時代、水はますます貴重価値が増します。すでに水の市場はでき、資源として注目し、確保しなければならない財産と化しています。
 日本人もまた、傍にある安全な水こそ最大の財産であることを、そしてその財産をいかに守り、また運用するのかを考えねばならない時期に来ているのだと実感しました。

 他にも小さいことは数多とありますが、今回はまず頭に浮かんだ3つのことを記載しました。
 年を重ねて老い、私もまた頭も体も幼き頃のままではないと実感することがあります。それは概念であり、現実であります。こうして異国の地に立ち、空気を吸い、食べ物を口にするという行為は、ある意味で老いを加速させ、また若返らせることなのかもしれないと最近思うようになりました。
 そして何よりも、こんな風に考えてしまうこと自体が、もう子どもではないのかと、やや虚ろな悲しみと満足を感じるのです。

                        以上 2010年6月29日記載