K.I.さんの便り
ドイツ留学中のK.I.です。年齢は20歳。性別は男性。
本文はドイツ留学に関する、感想や情報、教訓などを記載しております。
近頃は雨天が続き、肌寒い日がやや続く。だが完全に空から陽光が消えるのは21時過ぎであり、また夜空に明るみが滲み始めるのはドイツ時間で5時頃。昼が確実に長くなっていることを自覚する。
日本に帰るまでいよいよ2ヶ月を切ったわけであるが、そろそろドイツでやり残したことはないかと探すことにした。
・トレーニングを兼ねた観察
普段目撃するのは開店し、また人で溢れた街並みである。だが、これをまだ太陽も昇らぬ、しかし空が紫色に染まる頃から見て回るのもまた一興である。この際に単なる散歩としてではなく、ランニングを兼ねているわけであるが、自分と同様にランニングに精を出す者は以外と多く、走れば同じく息を切らしながら走る者たちと出会うことができる。また普段は車の往来で満ちた場所が閑散としている様は、ある種の感動のようなものを覚える。夜の無人とは異なる、朝の無人には動の前の静というものは物悲しさと滲み出る活力があり、またヨーロッパの変動が少ない静寂した街並みは日本では味わえないものがあるだろう。
また朝であるからこその冒険心もあり、普段は通りもせぬ道を進み、小さな発見を繰り返す。これはドイツだから、という理由ではなく、個人としての少しずつ積み重ねられるささやかな喜びとも言えるだろう。
まだ自分の暮らす街にすら見たことがない風景があり、視点を発見できるというのはとても興味深く、また底知れない人が暮らす社会の複雑さを表しているともいえる。
そんな感想を抱いてしまうほど、目と肌で捉える世界は時間帯によって異なるのだ。
・食に関する探究
基本的に食生活とはバランスが重要であり、それはドイツに至っても変わらない人間としての指針である。肉と野菜と穀物をバランスよく摂取することは健康を保つ為に必要不可欠である。
とはいえ自分自身が食生活に気を使っているとしても、あまり健康体とは言えないのが実情である。そこでこれまでドイツで得たレパートリーから、必要なエッセンスだけを抽出し、和食との融合を試みた。
結果から言えば完全な失敗である。マッシュポテトを米の代理にした豚丼などを製作してみたが、もはや完食することもままならない。絶望的な味である。
そこで分かったことであるが、料理には系列があり、無暗やたらに組み合わせるのは難しく、利用すべき点は料理法や香辛料に留めるべきということである。
異国での試行錯誤は一味違って面白い。こればかりは体感せねば分からぬ実感なのだろうと、最近になって思う。
以上5月30日記載